私は期日前投票が嫌いだ

前々回の記事、前回の記事と続いた3回連載の最終回。今回はそれらを受けて期日前投票制度について今回の選挙を通して感じたことを述べようと思う。まずこのタイトルを見てすぐに賛同してくれる人は少ないと思う。期日前投票制度は便利だし、私も過去の選挙では殆ど期日前投票制度を利用してきた。マスコミは期日前投票についてネガティブな報道をしていないし、総務省は「期日前投票制度の概要・メリット」というページで制度を説明しているものの、デメリットには言及していない。

期日前投票とはそもそもなんであろうか?公示日の翌日から投開票日の前日まで、自治体の裁量により開設された投票所において煩雑な手続きなしに、つまり投票日とほぼ同様の手続きで投票できるという制度だ。もちろん事前の申請もいらない。要するに従来の投票日が投票期間(=選挙期間)に引き伸ばされ、投開票日が投票期間の最終日兼開票日となっているという認識でいいのだろう。

投票期間と選挙期間(公示日から投開票日)が殆ど同じになるとどういうことになるのだろうか?

・政治家としての立場から見ると公示日、つまり投票期間までに自分の名前や顔を認知させ、政策を広報し、投票行動に繋げたいと思うだろう。つまり公示日前の行動、つまり自腹で行う政治活動に力を入れることになる。

・有権者としては選挙公報が配布される前から投票に行く人と、全ての情報が出終わった時点で投票に行った人で情報の格差が生まれてしまう。また期日前投票の投票所は地方自治体の裁量によって設置されるため、投票のしやすさにも差が出てしまう。一例を挙げると、大阪府箕面市では4ヶ所設置され、そのうち1ヶ所では午前6時半から午後10時まで投票が出来た一方、隣の茨木市では設置は1ヶ所だけ、時間も8時半から8時までだった。因みに茨木市は箕面市の2倍以上の人口を誇っている。

・行政の立場としてはもちろん期日前投票所の設置費用が嵩張る。これはもちろん税金だ。
・マスコミの立場としては出口調査の結果を毎日集計する羽目になり、またそれを公表することが常態化するだろう。これはもちろん有権者の投票行動に大いに影響を与えることになる。

つまりこういうことだ・・・

メリット

●公示日翌日からいつでも投票出来る

デメリット

●選挙にかかるコストが行政面でも政治家・政党面でも増大する
●有権者間で情報や投票しやすさに格差が生じる
●投票行動が出口調査によって左右される

これ期日前投票廃止した方が良くないですか?前回・前々回の記事でさんざん指摘してきた、選挙活動における規制と助成、立候補に対する障壁の除去を期日前投票が空文化してしまっているのだ。前回の記事では指摘しなかったが選挙公報というものがある。すべての候補者がそれなりの量の紙面を割いて自分をアピールでき、かつ全戸に配布されるものだ。これはたいてい公示日から3~5日後に配布される。これが届かないうちに投票期間が始まることを考えれば、それを候補者個人が代替するだけで100万単位でお金が飛ぶ。

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そもそも期日前投票があるから選挙に行く人がどれだけいるというのか。投票率は様々な要因によって上下するので一概には言えないが、少なくとも期日前投票制度が出来てから投票率が劇的に上がったという事実はない。乱暴に言ってしまえば、ちょっと便利になったからと言って投票に行かない人は行かないだろうし、期日前投票に行くような人は投票日が1日に限定されたからといって行かなくなりはしないだろう。

今回の参議院選挙では過去最高、有権者の実に15%が期日前投票を利用したらしい。この数字が増えれば増えるほど、公示日前の宣伝カーは増え、政治家は金に汚くなり、有権者は偏った情報に踊らされることになる。

だから私は期日前投票が嫌いだ。